いけにえと雪のセツナ、プレイ後感想と考察の第12回。今回はクオンとユーテスの感想・考察です。
カエルちゃんフードに時属性。覚える魔法も有用揃いの強キャラ。クロノトリガーの要素を詰め込まれていることもあって、開発陣の愛を一身に受けたキャラだな、というのがクオンの第一印象でした。
この子も、言動がそっけないので最初はあまり好きになれなかったのですが、ループしていると知ってからはそんな気持ちもなくなりました。(だいぶゲーム終盤になってしまいましたけれど。)何十回も何百回も、同じ人に同じ説明をしたくないよね。
もしかしたら、最初のうちは懸命に説明してくれていたのかもしれないと思うと、可哀想にさえなってきます。ユーテスと同じような喋り方で。「それでは、ウカテイナに着くまでの間に、いけにえの真実についてお話ししましょう。実は今、世界はこういうことになっているのです…あっ(セツナ死亡)」とか。リアクションも大変ですよね。「ヨミの旅は失敗していたのですね(10回目)」「キールは希少種だったのですか(30回目)」みたいな。次第に無表情/棒読みになっていく彼女が見える…。そりゃあ、最終的にはあんな事務的ガールになっちゃいますわ。
モルに来て2週間で、村人たちから絶大な信頼を寄せられているのも、「この人の信頼を得るにはこうすればOK」というのがもうわかりきっているからでしょう。
というか、1ミスでセツナ幼少期まで時間を巻き戻すのってだいぶキツくないですか。セツナが旅立つ直前ならともかく…。
セツナ達がユーテスのもとに辿り着く前に失敗したこともたくさんあるでしょうし、やっと辿り着いた時でさえ「現状維持」を選択されればまたやり直し。ゲーム中ではアニメもムービーもなくキャラが突っ立っているだけでしたが、セツナに選択を迫った時の期待感と諦め、戦うと答えた時の驚きと喜びを想像すると、息がつまりそうです。
■時の審判者ユーテス
満を持して登場し、戦闘したら消えてしまうユーテスさん…。ってそれキトと同じやないかーい!このお方も、謎の中心あたりにいるのに、詳しいことは何も教えてくれませんでしたね。輪廻の闇が元人間ということさえも。
もちろん、これから戦う相手が元人間で被害者なんて聞いたらやりづらいですし、「あえて教えない配慮」だったのかもしれません。でも、セツナが気づかなかったら知らなかったままというか騙されたままでしたね。ああ、それとも、自分の名前を忘れてしまうほどに長い間「封印」と「世界の巻き戻し」の使命にとらわれていたので、そのことだけで一杯一杯だったのでしょうか…。
そんな彼女ですが、クオンの服装に自分の趣味を活かす余裕はあったご様子。キミ、趣味を活かした結果が、自分が今着ている服と全然違うのはどういうことかな?その露出度の高い服は好きで着ているのではないとでも?
もし、王都の研究所の制服がアレだったりするならとんでもないですね。まあ、1000年の間に文化が変わっただけだろうけどさ。雪深いしさ。ユーテスの格好といい、「いけにえの想いが雪となる」という表現といい、旧王国時代の世界は雪に閉ざされていなかったのかもしれませんね。
話がそれましたが、どうもユーテスさんには「一人で世界を守りつづけた可哀想な人」で終わらない一面があるようです。
■王都研究員ユーテス
「時の審判者が研究中だった法石をすべて投入して封印し…手遅れだった王都は滅んだけど、世界の崩壊そのものは回避された。」
「時の審判者」を「ユーテス」と言い換えて、考えられることは。
1、「ユーテスが研究中だった法石」を、「(他の誰かが)すべて投入して封印」
→この地に結界を張って動けなくなっているのはユーテス自身なので、後半は違いますね。
2、「ユーテス」が、「(他の誰かが)研究中だった法石をすべて投入して封印」
→ユーテスは青年を暴走させた実験現場に居合わせたことになります。少なくとも、研究中だった法石がたくさんある場所=研究所には居たはず。
3、「ユーテス」が、「(自分が/自分たちが)研究中だった法石をすべて投入して封印」
→これが正しいのだと思います。ユーテス自身も法石を研究していたことは、サブイベントで明らかになります。
どう考えてみても、彼女は王都の法石研究者ですね。そして、魔導商会も。
■ユーテスと魔導商会
クオンのサブイベントは、魔導商会の真実を垣間見るものでした。そして、クオン…ユーテスもまた、彼らと深い繋がりを持っている事実が示されました。
「お主はユーテスの分身体か。お主たちならば見抜かれるのも無理はない。」
そんなセリフと共に、名も無き村の長老は語り始めます。
「会長は常日頃から言っていた。変わり果てた姿に変化してしまったあるものを元の姿に戻したい。自分たちの犯した過ちを正したいと。そして、魔物を超えるための法石を創ると言って研究を始めたのだ。」
「変わり果てた姿に変化してしまったもの」とは輪廻の闇のことでしょう。「自分たちの犯した過ちを正したい」と言っているので、輪廻の闇を生み出してしまった研究者たち=魔導商会(の会長たち)であることは明らかです。クオンも、「魔導商会の会長たちは、世界の事情を知っている」と発言していますしね。
以前の記事を書いた時点では、「魔導商会のヤツらは輪廻の闇を生み出した責任を感じていないのでは」と思っていましたが、今回の研究の発端となったのは償いの気持ちでした。とはいえ、「人体実験によって輪廻の闇になってしまった人間を救うための研究で人体実験をする」という頭の痛い事態になっていたようです。
ただ、ユーテスも同じ研究員だったはずなので、クオンが正義ぶって説教することには少し違和感を覚えました。もちろん、過去を悔やみ、絶対に同じ間違いを繰り返してはならないと思っているからこその怒りとも言えるのですが、ユーテスだって現在進行形でいけにえを取っていますからね。
輪廻の闇を封じるために、仕方なくいけにえを殺すこと。輪廻の闇を元の姿に戻すために、仕方なく人体実験を重ねること。端から見れば、どちらも同じようなものです。もっと言えば、いずれ限界を迎えるであろう封印よりも、根本的な解決を図ろうとしている研究のほうが未来志向とさえ思えます。まあ、ユーテスがいけにえを取らなければ研究する時間すらないので、お互い様かな…。どちらも、自分なりのやり方で罪を償おうとしていたのでしょう。
このサブイベントでは、素直にクオンに賛同できないやりとりが他にもいくつかありました。
クオン「法石はこの世の森羅万象を統べる法則の力を石に封じ込めたもの。遙か昔にどんな文明が創ったのかすらわからない代物なのに、それを新たに創ろうとするだなんて傲慢にもほどがあるわ。」
長老「理解してくれとは言わぬ。だが、研究者とはみな、限界の先に真理へと至る道があると信じている。」
クオン「その愚かな行為の最悪の結果が、世界を滅ぼそうとしているのよ!」
クオンの言い分はわかりますが、研究者の挑戦を傲慢で愚かな行為と呼ぶのは行き過ぎかな、と思うのですよね。別に私は研究者でも何でもないのですが(笑)。私たちの世界でも、核兵器や細菌兵器、クローンの研究などは正直恐ろしい。でも、今の暮らしと文化があるのは全て何かの研究があったからで、私には人の歴史を全否定はできません。どんな研究が良いもので、何が間違っているかは誰が決められるわけでもなく。この世の真理を知りたくて研究することそのものは、きっと止められるようなものではない…と思ってしまいます。(あと、今までの研究結果はすべて破棄しなさい、なんて他人に口で言われたって絶対捨てられないですよ)。
輪廻の闇を生み出してしまった研究だって、「世界を滅ぼすため」ではなく「人に魔力を取り戻すため」に始まったのですから。研究が失敗し、後世の人間に愚かだと思われたとしても、それは結果論でしかないでしょう。もし成功していれば賞賛されていたはずです。実際には失敗し、その業を1000年先の子孫にまで背負わせているので、後世の人間が怒ることもまた当たり前なんですけどね。
長老「全ては魔物から世界を取り戻すためだ。人間が魔物に怯えず暮らすための…。」
クオン「そんな詭弁、あたしには通用しない。何の研究をしようと、これ以上、生命をもてあそぶことは許さない。」
クオンはいけにえを取ることを「苦渋の決断」、「世界を守るために仕方なかった」と言い、ユーテスのことを「守護者」と呼びましたが、結局は魔導商会と同じような言い訳じゃないですかね。
もうひとつ…クオンは「法石の研究のために、どうしても人体実験が必要だったの。」とも言います。繰り返しますが、ユーテスも研究員ですからね。王国時代、喜んでとはいかないまでも、同様の実験に手を染めていたでしょう。少なくとも、そういうことをする組織だと知っていながら所属していたのです。おまけに、彼女が創りあげた法石がこれですよ。
ギアラスタ:ユーテスが悠久の時をかけて創りあげた法石であり、失われた技術のすべてが詰まっていると言っても過言ではない究極の法石。宇宙を創造する力も終焉に導く力も秘めている。
いやいやいやいや、いくら開発陣の愛を受けた(っぽい)キャラとはいえ、チートすぎやしませんか。主人公エンドが使う、全ての始まりと終わりの力を持つとされるジェネシスだって、別にエンドが創ったわけじゃないんですよ。これほどの法石を自分で創りあげるってどういうこと。というか、クオンに「法石を新たに創ろうとするだなんて傲慢にもほどがある」と言わせておいて、創ってるっていう。自分は創ってるっていう。
この矛盾の解があるとするなら、ユーテスが最初から人間を超えた存在である、くらいの設定でないと難しいですね。そんな存在がなぜ王都で派手な服を着て法石を研究していたのか知りませんが。もしくは、自分で創ってみた結果として、人間の分をわきまえない行為だったと後悔しているのでしょうか。
■ギアラスタ
ぼくがかんがえたさいきょうのほうせき。この法石について、いくつか疑問があります。
1、ユーテスが創りあげた法石なのに、クオンが「これはあなたたち(魔導商会)の研究の成果なの?」と問うこと。自分の名前すら忘れていたのですから、自分が創った法石のこともすっかり忘れていたのでしょうか。あるいは、クオンとユーテス間の情報共有に差があるか、ですね。クオンが見聞きしたり考えたりしたことは全てユーテスに伝わっても、本体のユーテスの記憶すべてをクオンが知っているわけではないのかもしれません。
2、悠久の時をかけて創りあげた、という不思議。封印から約1000年+ループの時間は確かに長いですが、封印後に法石を研究しているヒマなんてないですよね。万一ヒマだったとしても、「傲慢にもほどがある法石づくり」なんてしないですよね。また、封印後に完成させた法石なら、魔導商会が持っているはずがないですよね。
となると封印前に完成していたことになりますが、封印前に「悠久の時をかけて創りあげた」というのは不思議です。実は青年ではなくユーテスこそが、古代からの記憶を受け継ぐ存在だったとかでない限りは…。
■ユーテスと青年、そしてフィデス
この言葉、おそらくプレイした人みんなの印象に残ったのではないでしょうか。え、愛した人?唐突に何だ?と私は思いました。
「わたし自身の名」、は分かります。最初に何者かを尋ねたとき、「人としての名は忘れてしまいました」って言いますもんね。ではなぜ「愛した人の名」とかポロっと言うのか。
考えられる理由のひとつとしては、こんな風に人外的存在になってしまった彼女も元は人間なので、人間味を感じさせるようなセリフを言わせてみた、ということ。そうではなく、何かしらゲーム内に関係ある内容なのであれば、それはやっぱり、青年くんのこと、でしょうね。
いくら青年の暴走に責任を感じたとはいえ、咄嗟に、そして1000年もの長きにわたって、自分の身を犠牲にできるものかしら、と思うわけです。
さらに言えば、戦闘後にフィデスを復活させますよね。驚きました。「復活するかどうかは賭けだった」ような存在に、自分の命と魔力を全て托したんですよ。単に戦力増強のためなら、もっと確実な方法がいくらでもあったはずです。クオンをパワーアップさせるとか、自身が法石になるとか。
青年を封じるためにずっと自分を犠牲にしてきた彼女は、最後の瞬間も自分を犠牲にして、青年が生み出した存在を再生させました。「消えゆく命を救うために、未来の可能性のために」。フィデスを呼び戻した時のセリフです。これは普通に考えれば世界の話ですが、「青年の消えゆく命を救うため、青年の未来の可能性のため」ともとれますね。輪廻の闇は滅ぼすしかなくても、せめて青年の一部だったフィデスに、未来を歩んでほしい。そんな想いがあったのかもしれません。
また、これまでの記事の通り、私の考えではエンド=人間だった頃の青年と同じ性質の魔力を持つ存在です。ユーテスは言いました。エンドの出現をはじめとするさまざまな変革が自分に影響を与え、2人の名前を想い出したと。目の前に立つエンドから青年の何かを感じたことも、想い出すきっかけになったのかもしれないですね。
■その他、些細な疑問
セツナ「だったら、私たちと一緒に…!」
ユーテス「(錫杖をクルクルしながら)立ち向かいなさい、セツナ!あなたは、あなたの役目を果たすのです!」
セツナ「これは、私の役目。私は役目を果たす…。」
ユーテス「それでいい…。」
このシーン、なにか不自然と言いますか、セツナが一瞬で洗脳されたみたいになるのが少し不気味でした。もし、歴代のいけにえがユーテスに命と魔力を捧げるときに同じ光景があったとしたら怖いですよ。
・輪廻の闇が過去へ逃げた時のクオンのセリフ。
クオン「終わりよ…。崩壊が始まった…。輪廻の闇の制御を失ったこの空間は消滅する…。」
よくわからないのですが、輪廻の闇が過去へ逃げずにその場で消滅していたとしても、「輪廻の闇の制御を失ったこの空間は消滅する」のでは…?
・いけにえ失敗時のこと。
最果ての地に近いほど魔物が強そうですし、いけにえを出すモルが離れ小島にあること自体はいいんです。もし最果ての地の真横に村をつくって、魔物の襲撃で村ごと滅びるのは絶対にあってはならないことでしょうから。
でも、モルから遙々いけにえが旅をすると、失敗することだってありますよね。実際ナナセもダメでしたし、1000年の間に何度も失敗があったでしょう。そういう時はどうしていたのか…。次のいけにえが出るまでユーテスは持ちこたえられていた…と考えると、実際は10年に1回も命をもらわなくてよかったけれど、保険の意味で早め早めに補給してたのでは…と…。
ユーテスとクオンについては、深く考えるほどに黒い部分が出てきそうな気がするなあ…というダークな思いで、彼女たちの感想を終えたいと思います(ひどい)。
次回はヨミについて書きたいと思います。