水の器: いけにえと雪のセツナ、プレイ後感想と考察(11)セツナ いけにえと雪のセツナ、プレイ後感想と考察(11)セツナ - 水の器

2016年3月25日金曜日

いけにえと雪のセツナ、プレイ後感想と考察(11)セツナ

いけにえと雪のセツナ、プレイ後感想と考察の第11回。今回はセツナちゃんの感想と考察です。


実は、はじめてキャライラストが公開された時に「あっ、あまり好みのタイプじゃない」と思ってしまったのですが、プレイしてみると思いのほか可愛らしかったセツナちゃん。頭のアレは武器だったのね。ゲーム内モデルの髪の表現がよくて、後ろ姿が好きです。あと、ふわっとマントを広げるところも。

髪と言えば、セツナと初めて出会う名残雪の石碑で、後ろ姿なのに「白い肌の少女」と表示されるのはいただけないですね。雪のように白い肌、みたいなことを印象づけたかったのかもしれませんが、「赤い髪の少女」のほうがよかったと思います。

その他の見た目の感想としては、「お腹のリボンとめなよ」ということに尽きるのですが、ナナセもとめてないのでこれが正しい着方っぽいです。モル・カルチャーです。


■謎の主人公ラブに引かないで


セツナからエンドへの好感度が初対面から最大値っぽいので、「あーまた男性のドリームMAXヒロインちゃんか」と思ったことは否めません。今年に入ってから、特に理由無く初対面の主人公に惚れ込みその日の夜にくっついて寝ようとする清純派()ヒロインのRPGもプレイしてしまったので余計に。

けれど、その部分にはきちんと理由がありました。よかった。命を狙われながらも必死で旅に同行してほしがったのは、エンドが旅を成功させるためのキーマンだということを感じ取っていたからのようです。まあ、それ以上の感情が見え隠れしないでもないですが。やっぱり幼い頃に未来のエンドと出会っていた説を推したいです。笑


■セツナちゃんの意味深発言集


「私、あなたと出会うこの日をずっと待っていた気がする…。
   なんとなく、ただなんとなくなんだけど
 だから会えてうれしかったよ」

「………。あなたでよかった。(駆け足で立ち去る)

「エンドがこの旅に加わったおかげでうまくいきそうな気がする。」

「あのね…。夢をみたの。この旅のこれからの夢…。でも、そこにエンドがいなかったの。エンド…って、名前を呼んでも出てきてくれない…。私、とても寂しくなって目が覚めたの…。だから今…ホッとしてる。知ってるよ、私。エンドがみんなを守ってくれてるって…。だからお願い…。このまま…最後の瞬間まで…どうかこの旅を見届けて…お願い…。」



きゃー。恥ずかしくなっちゃう。ドキドキベタベタな恋愛感情じゃないんですが…。やはりなにか特別な人なんでしょうね。夢の中で「エンド…」って呼ぶところ想像したら可愛すぎます。


■とにかく純粋


自分の護衛隊であっても自分が護る。手の届く範囲に困っている人がいれば助ける。襲ってきた相手とも分かり合えると信じる。とにかく純粋で、まっすぐで、やさしくて。素敵なヒロインだと思います。前にも書きましたが、いけにえの旅を「死ぬための旅」だと思っていないんですよね。実際、自分は死ぬのですけど、それ以上に「たくさんの命を未来へ繋げるための旅」と信じて生き抜く彼女は美しいです。

何度も命を狙ってきた、敵かもしれない相手に「フィデス(信頼)」という名前をあげるのもいいですね。「フィデス」という言葉が、あの世界で一般的かはともかく。文化的には「シンライ」くんと名付けちゃってもおかしくなかった。お父さん「ライシン」だし。


■いけにえのはじまり


「いけにえ」についてですが、現代社会の価値観とは絶対に相容れないものであるのに、「それが当たり前」という世界観をしっかりと確立させられていたのがすごいなあと思いました。作中で誰も、現代的な価値観で「いけにえが命を捨てるなんて間違ってる」みたいなことは言わないんですよね。あえてそうしなかったのは素晴らしいの一言です。

「いけにえの歴史はモルから始まった」と雪世界の記憶に明記されていますが、どこかのお婆さんが意味深なことを言っていました。

「島のため、人のためと、抗い続ける村がある。いけにえの村の人々がすべてを背負うのはなぜじゃろうな。過去に何かがあったとしても、過去は過去だというのに。」

これを聞いたとき、モルは旧王都の研究員が集まって出来た村なのかな、と思いました。青年が暴走した時、「ユーテスが研究中だった法石をすべて投入して封印」したそうですね。そうして、ユーテスはその場から動けなくなり、寿命と魔力を補充するためにいけにえが必要となった。ユーテスが頼んだにしろ、いけにえ側から申し出たにしろ、何らかの関係があり、同じ罪を背負っていると考えられます。

「モルの村人達は、使命感と誇りに支えられて生活を営んでいる。」雪世界の記憶にはそうありますが、もとは罪滅ぼしのための償いだったのではないでしょうか。自分たちが生み出してしまったものから世界を護るため、1000年先の子孫にまでその業を背負わせるのはやりきれませんね。


■最後のいけにえ


マナ「セツナだけがこの世界の最後の希望」「新たな未来を築くための最後の希望」
ユーテス「セツナ、あなたは特別。だから運命を選択することができる」
(なお実際は選択できない模様)

なぜセツナだけが、これほど重い宿命を背負わされてしまったのでしょう。もちろん、歴代のいけにえも命を捨てるという点で重いのですけど。セツナはかなり特別視されているようですが、「母親譲りの魔力の高さ」くらいしか特徴はなかったように思います。何だったら、歴代最強の魔力があって時折未来が見えたというマナの方が凄そうなのに。「なぜセツナが」というより、「結界が限界を迎えた時の最後のいけにえがたまたまセツナだった」ということなのでしょうか。

ところで、セツナ/マナ/ナナセが旅に出た間隔ってどうなっているのでしょうね。作中では敢えてぼかされていました。特に、ナナセの旅が失敗してから、マナが旅立つまでの期間が謎なんです。

ナナセの旅が失敗したと知っているのはナナセの護衛隊とタギシ、あとはユーテスくらいかと思っていましたが、セツナのサブイベントを見る限りライシンも知っていました。

ライシン「ナナセの護衛隊の役目が終わったあと、なぜ帰ってこなかった?」
ヨミ「護衛に失敗した俺がどのツラ下げて帰ってこれるんだよ。」
ライシン「それでもマナは待っていたんだ。お前の帰りを…」

ヨミが「実は失敗した」と言いにくそうにする素振りも、ライシンが「えっ、失敗してたの!?」となるリアクションも無し。マナも知っていそうな感じです。となると、すぐに次のいけにえを出さなきゃという流れになるでしょうけれど…。セツナ出産もありますし、少なくともセツナが立てるようになるまでは側にいたようなので、ナナセとマナの間に他のいけにえさんがいたのかしら。ナナセの次がマナって明示されていましたっけ。

マナの次がセツナというのは、村のお婆さんが「母娘が続いていけにえに旅立つなんて因果だねえ」と言うのと、ユーテスが「先代のいけにえと約束した日を基点に時を巻き戻している」と言うので、合っていると思うのですが…。ん、これだと「先代のいけにえと約束した日=マナが旅立った日」になるので、マナの旅は1日で終わったことになりますな。めっちゃトントン拍子。モル→(船)→ウカテイナ→(飛空艇)→最果て、みたいな?


■奇蹟に説明は不要


マナが生前身に着けていたというお守り。袋の中には何か硬い石が入っている。

セツナ旅立ちの時、これを貰った時点で、絶対に何かあるなと私は思っていました。袋の中の硬い石が、中盤~終盤に必ず何かのカギになるはず。なってくれ!と。願望レベルでしたけれど。ですから、サブイベントで母のお守りがホーリーの法石に変化した時の喜びといったらないですよ。伏線回収素晴らしい!…で、勇んでホーリーの説明文を表示したら、誤字ってるというね。スタッフゥー!

ま、まあそれはさておき、大切な言葉をスタッフさんは残していきました。「ホーリーが誕生した原理は不明だが、奇蹟に説明は不要である。」至言ですね。これで、このゲームの考察に矛盾が生じても、「そこは奇蹟が起きたんです。奇蹟に説明は不要である^^」と仏の顔で言い切れますね。セツナ考察班のみなさまは積極的に使っていいと思います。(笑)


■雪になって降り積もる


俺たちは最後の戦いに勝ち、必ず生きて帰ってくる。だからセツナには戻ってくる場所が必要なんだ。彼女が帰ってこれる場所を…この村を守っていてくれ。

サブイベントでヨミにこんなことまで言わせておいて、あのラスト。「振る/振らない」の選択肢を選ばせておいて、変わらぬラスト。賛否がでるのは仕方ないですね。物語としては、すごく綺麗に終わるんですけどね。

やはり、「もうセツナが命を捨てる必要はなかったのに捨ててしまった」というところが受け入れられない人は多いのではないでしょうか。それはその通りで、せっかく最終決戦に勝って、輪廻の闇…青年だけを滅ぼせばセツナが死ぬ必要はなかったんです。でももう、必要があるかないかみたいな理屈ではなかったんでしょうね。セツナの優しさが、若さならではの直情が、青年に寄り添うことを選んでしまった。

あの世界では、セツナの中では、「いけにえとしての使命を果たす」ことが「お腹がすいたらご飯を食べる」というのと同じくらい当たり前のこととして存在していて。セツナに悲壮感がまったくないということ自体に、ゲーム外の私は悲しみを覚えましたよ。

「私の肉体を滅ぼしてください。」
肉体が滅んでも、魂は雪になって降り積もる。この結末を迎えた時、ゲームの主人公はエンドだけれど、やはりこれは彼女の物語だったんだと思わされます。英語版のタイトルは「 I AM SETSUNA 」。言葉を超えて、より多くの方に彼女の物語が届くといいですね。




次回はクオン/ユーテスについて書きたいと思います。