水の器: ハーヴェステラ:貴重品考察─イヴと蛇と、約束の果実(7) ハーヴェステラ:貴重品考察─イヴと蛇と、約束の果実(7) - 水の器

2023年1月28日土曜日

ハーヴェステラ:貴重品考察─イヴと蛇と、約束の果実(7)

ようやく、すべての読み物についての想像を文章にすることができました。最後に想いを馳せるのは、赤い髪の青年はどうなったのか…。


●『楽園の終わり』から想像する

「彼が幾つの楽園をめぐろうと、彼の求めるものはどこにもなかった。棺の列はやがてほつれていき、果てには赤髪の青年だけが残っていた」「少女が祈りを聞き届けると、蛇は忽ち赫き霧となって散っていった」


この物語の結末が、事実でも同様であったなら。青年と旅を共にした”棺”の仲間たちは次第に数を減らし─亡くなったか、諦めたか─青年はひとり、イヴの治療法を見つけられないまま死んでいったことになります。嫌だ、悲しすぎる。


寓話が事実に基づいているのは楽園の崩壊原因だけであってほしい、青年が失意の中ひとりで死んでいったなんてことは創作上のせつない演出であってほしいです。せめて”棺”の仲間に見送られて亡くなったとか…。でも一番最後まで旅を続けそうなのはやっぱり青年だものなあ…。


もうひとつ、悲しい想像です。「青年は旅の途中でとっくに死んでいた」


寓話の中で青年は、”赫き霧となって散る”という幻想的な死を迎えるのですが、実はゲーム内で実際に赤い霧となって消える人物がいます。隠しジョブ「サムライ」を伝授してくれる謎の人物です。


彼は「ここを離れる前に」、ある刀と鞘をひと目見たくて探していたといいます。そしてボロボロになった刀と鞘を不思議な力で元に戻し、「これでオレもアッチへいける…」という言葉とともに赤い霧となって消えるのでした。セリフと状況から考えるに、どうもこの世の人間とは思えない。2000年以上前の亡霊だったのでは?という印象を受けます。そしてハーヴェステラ界には、人間には”魂”ってものがあるんじゃないか?という設定があります。


赤い髪の青年も、イヴの治療薬を求める道半ばで倒れ、それでも諦めきれなかった魂が旅を続けていた…のかもしれません。ずっと青年の見た目であったことも説明がつけられてしまいます。その場合、だいぶ早くに亡くなってしまったことになりますけどね。仲間もみんな赫き病に思うところのある魂で、実態がないから楽園の門も通れる。知らぬ間に楽園にあらわれては、未練ある魂を連れて行く…。『棺の国 調査記録』も、伝奇モノに早変わりです。


●『棺の国 調査記録』から想像する

”棺”を追って楽園を飛び出し、ついに接触を果たした『記録』の書き手。彼の目的は棺の国の調査であったはずなのに、長い旅を経てようやく出会ったにも関わらず、記録に書かれている情報が非常に少ないです。もっと言えば『調査記録』だというのに、最後は日記のような内容の独白で終わっています。


あなたがたはなぜ棺を背負っているのか?首長はなぜ国のはじまりから計算が合わないほど若いのか?この銀の林檎は何なのか?


”棺”たちに質問を重ね、調査記録を書き上げることが疎かになるほど、彼は赫き病に蝕まれていた。思考が衰えている。まともな判断能力が失われている。差し出された林檎が、ひととき病を癒してくれる。この林檎が必要だ。自分にも家族にも。彼らは家族のための林檎まで分けてくれるだろうか?家族にもこの林檎を食べさせねば…。ころしてでもうばいとる


という事実があったかどうか。ちょっぴりホラーな想像でした。


●メインストーリーのエンディングから想像する

ここまで悲しい想像ばかりになってしまいましたが、やはりひとつでも希望を持ちたい…!エンディングで語られていた”未登録のエデン型シェルター”とやらに、青年に関する何かが残っていないでしょうか。それこそ魂のまま残留しているとか。それもつらいか。


さすがにシェルター内で生き延びているまではないと思います。再現性こそないものの、自分に不老不死の効果を発現させられていたとして、人類がいるなら地球のガイアダストは今も撒かれ続けているはずですし。(リガイアで死季の日は閉じこもっている仲間たちもみんなロストガイアを普通に探索していて、マップでダストが舞っているようにも見えないので、今は撒かれていないという前提での話です)


星の少女ガイアから人類として認識されない状態で存在している、なら可能性はありますけれど、どうも不穏な形にしかなりませんね。青年が生きていなくてもいいので、イヴをチャイルドフッドにまでして、世界中を徒歩で訪ね歩く旅までして、何一つ報われないと感じたまま亡くなっていないといいなあ、と思います。


病の克服に希望を見いだせたので、自分が直接イヴを救うことは叶わずとも、いつかこの記録を見つけてほしい…みたいな。


あるいは、それはもう提示されているのかもしれません。


■赤髪の青年がのこしたもの

ゲーム内の農作物に、ひとつ変なものがありますよね。「約束の果実」です。名前からして異質ですし、見た目も謎の光に包まれており、なにやら自然物ではない気配。極めつきは、その説明文です。他の農作物はみんな味や見た目や用途などの説明がされているのに、約束の果実の説明文ときたら。


人類と星の遠い記憶……ふたりがたどり着いた たったひとつの約束……。


何?って感じです。まあファンタジーRPGだし、ひとつくらいこういうアイテムもあるよね。プレイ中はその程度に流していました。けれどクリアして世界の真実を知り、貴重品を読み終わった今となっては、どうしても彼らの物語と結び付けてしまいます。


”人類と星の遠い記憶”。遠い、というならば、これはアベルとリガイアではなくカインと地球の記憶。「約束の果実」の苗は、リガイアで流通していないですしね。


”ふたり”はきっと、赤い髪の青年と蒼き髪のイヴ。なぜならこの果実は、加工すれば「林檎」だとわかるから。では、”たどり着いた約束”とは。


ところで、「約束の果実」の加工方法は4通りあります。リンゴジュース、リンゴジャム、禁断のアップルパイ、絶品エデンカレーです。これらのうち、リンゴジャムを除いた3つに共通しているアイテム効果が”ダメージ床ガード”。「約束の果実」単体で作られるリンゴジュースにこの効果があることから、パイとカレーの効果も「約束の果実」由来のものだと考えられます。


そもそも、ハーヴェステラにおける”ダメージ床”って何なんでしょうか。マップの様子を見る限り、人為的に撒かれた毒物ではなさそうです。赤や紫色の沼に生えているのは、なにやら結晶めいたもの。モノライトや、シーズライトや…レッドクイーンに似たような形の。


私はこれを、星そのもの(ガイア)が発生させている毒物だと考えています。ガイアダストと同質のものだと。その毒性をガードできる効果があるというのは、決定的ではないでしょうか?きっとこの果実は青年の研究の成果物で、加工次第で赫き病の薬をつくれるんだと思うのです。希望も込みで。


この林檎を、クレスに調べさせてほしい。クレスのキャラストーリーは死季の病の治療薬を完成させたいという内容で、医者は万能ではないからこそ…という結論に落ち着いたけれども、薬ができるなら何よりじゃないですか。もう死季は来ないから、薬は必要ない?月の揺りかごで眠るイヴは、おそらく赫き病を患ったままであるはずです。


アリアの意識が身体に戻ってきたのは、ガイストによるシーズライトの励起実験で、星の記憶領域が開かれたことによるものという推測がなされていました。これが正しければ、イヴの意識も戻ってきていておかしくありません。(そのあと主人公たちも開いていますし。)彼女のために薬が必要です。


「必ず、病気を治す方法を見つけるから」

その約束がイヴに届いたところを見たい。そんなDLCを、なにとぞ…!と思っています。


***


<おわりに>

何とか読み物考察を書ききることができましたー。想像が多すぎて、ほぼ二次創作みたいになってしまいましたが、それはそれで。


書いている途中に何度も矛盾が出てきたり、他の可能性が浮かんだりで、最後まで書くのが大変でした。時間がかかりすぎたので一度心が折れ、もう書くのやめようかな…となった瞬間もあり。こんなの絶対違うくない?みたいな心のささやきなども。笑


もう一度自分に言い聞かせますが、それはそれで。正しいとか間違っているとかは関係なく、SFの知識がまったくないいちプレイヤーが遊んで想像した物語のひとつです。他の方の解釈もいろいろ読んでみたいなあ。すっかり赤い髪の青年に思い入れができてしまっているので、貴重品関連の考察をぜひぜひ。


SF超詳しいマンの、「この部分は〇〇オマージュなので~」みたいな解説も知りたいです。あと私はほとんど料理会話を見ていないので、そこにも何か知らざる世界設定の秘密があるかも。公式さんが設定集を出してくれるのが一番うれしいのですが…。


けれど、公式さんから”答え”を知ってしまえばもうこのポストは二度と書けないものですから、その前に完成して良かったです。知識は不可逆、知ってしまえば知る前には戻れません。正解を知らないからこそ好き勝手に書けたのは、苦しくも楽しかったです。


ディアンサスの言葉で始めたポスト、終わりはガイストの言葉で。


“情報に足りないリアリティを、お前たちは想像力で補完するようにできている”


ハーヴェステラ、楽しいゲームでした。


(おわり)