”人間は欠落の中にこそ真実を見出す”
ゲーム内で手に入る貴重品、『蒼き髪の挟まった手記』『棺の国 調査記録』『楽園の終わり』等のテキストについて想像を巡らせるポストです。
<はじめに>
赤い髪の青年が棺をかついで旅をしている。
最初にその情報を見た時、私は「じゃあ中に入っているのはイヴか」と思いました。棺なのだから中身は人、青年がかついでいるならイヴだろうと脳内で直結したのです。(妹の入った木箱を背負っている某炭治郎も浮かびました)
それから『手記』を読み、「永遠を求めてレッドクイーンに会いに行くってことは、レッドクイーンと接触すると身体の時が止まるんだ」とも思っていました。 ところが、アリアのイベントやストーリーに出てくるチャイルドフッドの話は「意識」のことばかりで、「身体は正常」とのこと。正常というからには、細胞分裂が行われないまま肉体が停滞しているだとか、テロメアが修復され続けている等の”異常”はないということになります。
さらに、アリアはレーベンエルベによるハイバネーション処置のおかげで生きながらえていたと判明したため、チャイルドフッド化=身体の時が止まる説はなくなってしまいました。(※あくまで私の考えの中で)
つまり、レッドクイーンとの接触で起こるのは「意識(魂)が星の記憶領域に閉じ込められる」だけであり、そのまま放っておくと身体は普通に死ぬことになります。 (※魂と星の記憶領域云々は目覚めたアリアが立てた仮説で、一般には「なぜか意識が戻らない」とだけ思われていた)
レッドクイーンとの接触が、肉体活動や病状を止める手段ではないなら、余命の短いイヴをわざわざチャイルドフッドにしてから棺に入れて旅に連れて行く理由がありません。「離れたくない」等の理由で連れて行くのはまだわかりますが、意識不明にする必要性はまったくないですよね。しかも、目覚めさせる方法がわからない手段で。
ここで「イヴが棺に入っている」という前提での考察は行き詰まってしまいました。気を取り直して「イヴをレッドクイーンに会わせる理由」を考えたところから、この考察は始まります。
■蒼き髪の挟まった手記(事実)
【概要】
私の余命はもう短いと医者に言われた。こんな時代だからか落胆もなかったが、それを聞いた彼は三日三晩泣いていた。やがて彼は「永遠」について熱心に調べ始めた。そんなものはきっとどこにもないのに。
ある日、彼は私にこう言った。「女王に会いにいこう。永遠はそこにある」
【他の書物やストーリーとあわせて推測できること】
・書き手の「私」→蒼い髪の女性イヴ
・彼→赤い髪の青年。イヴの兄、または恋人
・女王→レッドクイーン
【思考】
いきなり余談ですが、主人公の髪色を『蒼』でプレイしていたので、手記を見つけた時にテンションがぶちあがったんですよね。これは主人公の過去に繋がる手記…!?キャラメイクで選べる髪色があんなに少なかったのは、そしてプレイ中に変えられないのはこの仕掛けのためだった!?って。調べたらみんな蒼き髪が挟まっていたのでがっかりです。笑
これは手記なので、事実がそのまま書かれていると考えます。書き手に死が迫っていることで泣いた男性は、兄か恋人かはわかりません。事実ベースと思われる記録には記述がないからです。イヴが事実でも”少女”なら、夫ではないのだろうと思いますが。
個人的な感覚としては、手記で兄のことを”彼”と書くのは少し不自然に感じます。手記というからにはもっとページ数があるはずなので、主人公にはちゃんと読んでほしい。
さて。青年は「永遠」について調べ始め、レッドクイーンに行き当たります。なぜか。
人類がレッドクイーンについて知っていることは多くないはずです。突如地殻を破って出土した結晶体であること。星全体に致死性の赤い塵を散布していること。内包する星核には、星の遺伝子が入っているとされること。これだけでは「永遠」に繋がる内容が読み取れません。青年はイヴを死なせたくないので、死=永遠と捉えたわけでもないでしょう。
そう、青年はイヴを死なせたくないから「永遠」を調べ始めたのです。けれど、大切な人が不治の病にかかった場合、まず求めるのは「永遠の命」ではなく「病気の治療法」ではないでしょうか。ただ、その治療法を見つけ出すまでの時間がもう彼女にはなかった。だからこそ彼は永遠を求めた。永遠に近いくらいの長きにわたって身体を保存できる方法を。
そう考えた時、青年が欲したのはイヴに対するハイバネーション処置ではないかと考えました。考え方としてはクライオニクスです。
※クライオニクスというのは、現代医療では治療が難しい人の身体を冷凍保存し、治療が確立した未来に解凍して治すというものです。(参考)
ハーヴェステラのメインストーリーで、「地球の楽園で暮らす人類」と、「月の揺り籠でハイバネーションを受けている人類」がいつ分かたれたのかは、私には理解できていません。地上の楽園はすべて「滅亡」したようなので、おそらく楽園が出来上がった前後に、地球で暮らすか月で眠るかを選んだのだと思いますが…。
もし自分で選ぶことはできず、限られた収容ポッドに入れて残すべき人類の選別が行われていたなら、楽園で生きる人にはすでにハイバネーションの権利がなかった可能性もあります。実際のところはわかりませんが、青年がイヴのハイバネーションを望んでも叶えられない状態だったとします。
<例>
・上述の通り、選ばれた人間しかハイバネーションを受けることはできなかった
・"種の保存"を掲げる以上、健康な者しか申し込めなかった
・混乱や争いを防ぐため、実はほとんどの人類にはハイバネ技術や揺りかごの存在が伏せられていた
等々…
それでも熱心に調べていくうち、アリアの現状を知ったのではないでしょうか。レッドクイーンと接触した彼女は、レーベンエルベにとって貴重な実験体となっている。イヴも同様の存在となれば、レーベンエルベにとって最優先で保存したい対象となるのでは。そう考えた青年は、イヴにレッドクイーンと接触するようお願いしました。
イヴはどう思ったでしょう。アリアの脳波状態についてどこまで開示されていたかはわかりませんが、とにかく意識不明になるのだし、そこからの回復方法は分かっていません。実験体として扱われるのも不安なはずです。そもそも手記の書きぶりからして、既に死を受け入れていた節もあります。
けれど、大切な青年の想いには応えたかった。だから二人はレッドクイーンに会いに行ったのでしょう。
青年はイヴに約束しました。「必ず、病気を治す方法を見つけるから」
■幼年体の確保報告(事実)
【概要】
ある研究記録。
新たな幼年体を確保。このイヴ型幼年体はチャイルドフッド2と呼称する。
アリア型幼年体同様、オービタル・クレイドル(軌道の揺りかご=月の揺りかご)で保存
【他の書物やストーリーとあわせて推測できること】
・イヴ型幼年体→『蒼き髪の挟まった手記』に登場し、レッドクイーンに接触した女性イヴ
【思考】
これは月のレーベンエルベの研究記録でしょうから、事実が書かれていると考えます。レッドクイーンと接触したイヴは、アリア同様の状態となったようですね。そして赤髪の青年の思惑通り、月の揺りかごで”保存”されることに。
いつどのようにしてイヴを月へ引き渡すことになったのかはわかりませんが、少なくともこの時点ではまだ、地球が次元の狭間に落ちてはいないようです。
広い地球で一人の人間が幼年体となったことを、月のレーベンエルベが知る術は、地球からの通信だったのでしょうか。あるいは地球をモニタリングしたり、たびたび調査に訪れたり、などしていたのかもしれません。(特にレッドクイーン近辺)
ともあれ、イヴは無事に月の揺りかごで眠っているようです。…今も…?