雪景色の中に混じる、色づいたままの木。人びとの暮らしを想像させる民家の内装。絵本のような世界には、開発者の方の愛がしっかりと感じられました。(実際はどうか知りませんけど。笑)
個人的にとても好きなのは、街の人たちの会話がストーリー進行に応じて移り変わることです。ある程度進めてからまた戻ってきた時に、というのでも全然嬉しいのですが、本作では街なかで少しストーリーを進めるだけでも変わります。嬉しくて、つい全員に話しかけちゃいますよね。
ストーリーの目標が「いけにえの旅」から「輪廻の闇を倒す」に変わると、ゲームオーバーの時にでる文字も変わりました。法石に蝕まれた敵に何度もヤられたので気づいちゃった…。前者は「いけにえの旅は失敗に終わった」で、後者は「世界の命運は変えられなかった」。こんなところまで芸がこまかい。
街の人たち、いわゆるモブキャラの多くは名前を持ちませんが、「学者肌の青年」、「とがり声の老婆」、「黒目がちな女の子」など全員に特徴づけがされています。「野太い声の木こり」の息子と思われる少年が「声の低い男の子」だったりして、これまた芸がこまかい。
もちろん民家にも入れます!内装も作り込まれていて、たとえばベッドが2台並べてあっても、枕の位置やベッドサイドの小物がそれぞれ違っているんですよ。
また、一般的なRPGだとどうしても『宝箱』のデザインが浮きがちですが(プレイヤーに気づかせるため)、これもすごく可愛い木箱なんですよね。ペンキで描いたお花みたいな模様もついていて。一方、鍵のかかった宝箱は古代文明の遺物で、不思議な材質の箱に『時』のマークがついています。素敵。
前に書いたセーブポイントの件といい、世界観を壊すようなものは極力おかないようにするコダワリの姿勢が垣間見えました。
■宿屋と商人たち
どの街にも宿屋がないのは少しさびしかったです。そして少し不便でした(笑)。この世界では、いけにえ以外の旅人が少なそうですから、宿屋を営む理由がないのでしょうか。仮面の一族のような傭兵や、 魔導商会の面々、どの街にもいるブッキーさんなどに需要はありそうですけどね。
宿を本業にできないまでも、誰かに「うちで休んでいきなよ」みたいに言ってほしかったな。ジュリオンさんも自分の家があるのに…。あ、でも7人も泊められないからかな?そこまでリアル路線にしなくていいよ?(笑)アイテムのテントやコテージは、7人が余裕で寝られる大きさでドーンと出てくるんでしょうかね。それにしても、リアルを追求するあまり持ち物の個数制限が15個とかじゃなくて本当によかった。見えない部分のシステムは利便性が採用されたようで何よりです。
ところで、ブッキーさんって…。一人ですよね?ブッキー&ホッキーの説明文を読む限りは。彼はどうやってすべての街に存在しているのだろう。こんなところでゲームのご都合主義が発動しているのは不思議だなあ。もともとはブッキーさん一人が始めた旅商売だったけれど、それはブッキー&ホッキー発祥の逸話みたいなもので、今では旅商人全体の通称となっているのでしょうか。屋号かな。
複数人だとして、同じ看板を掲げる人間がどの街にも1人いるほどの数なら、もう「旅商人」の意味はないですね。ブッキーの志が多くの商人たちに広まって、いまや旅せずとも世界中に笑顔を届けられるようになったということにしておきましょう。
いちばん不思議なのは酒場のオジサン。一度レシピを渡すだけで、どんな料理でもすぐに作ってくれます。しかも、一人にレシピを伝えれば全世界に伝わる酒場ネットワークがある…。絶対ラインかフェイスブックやってるね。
というのは冗談で、実際は場所ごとに毎回レシピを渡しているのでしょう。ゲーム的にはくり返しのやりとりが省略されているだけで。それより、エンドたちが街の人からレシピをもらう時はだいたい「材料持ってるの!?なかなか手に入らないから食べられないんだよー(涙)」という展開ですけど、みんなオジサンにレシピを渡せばいつでも作ってもらえるんじゃないかな。
ただ、珍しい食材を渡す必要もないところからみて、たぶん結構な割合で代用品が使われているはず。ああ、だからレシピ持ちの人にとっては納得のいく味にならないんですね、きっと。
■サブイベント
サブイベントは、おそらくクリア直前の各キャラ最強ナントカを集める系しかなかったと思います。攻略サイトも見てみましたけど。こんな世界設定と旅の目的なら、仕方なかったかもしれませんね。
でもでも、せっかく飛空艇を手に入れて世界を飛び回って、魔法の木材でオモチャをつくる老人や、ユウニ温湖(笑)にとびこんだ魔物を想う少年なんかに出会うのですから、何らかのイベントはあってほしかったかな。雪原をさまよっている人たちとか、何かを知っていそうなサウナの老人とか。
せめて、せめて村を滅ぼされた復讐者の誤解をときたかった…。誤解されたまま死にかけている彼がかなしすぎました。カブタン少年同様に、「消えない憎しみが生きる糧となるのなら…」ってやつなんでしょうか…。
こんな風に「発生しなかったサブイベント」で切ない気持ちになりましたが、「発生したサブイベント」はどれも面白かったので、各キャラの話をするときに感想を書きたいです。
■魔物たち
一見すると色違いなだけの魔物でも、たとえばトサカが大きくなっていたり、ツノのデザインが変わっていたりと、こまかいところまで手を加えられているのに感心しました。
■雪世界の記憶
以前の記事で、やれ連携がわからないだの、刹那の効果がわからないだのと散々書いてしまったのですが、全部「雪世界の記憶」に詳細説明があったのですね…。すみません。まさかシステム系の説明がそこにあったとは。うわあ、これをプレイ中に読んでいたら、戦闘スタイルや感想が随分違っただろうなあ。
なにしろコレクター図鑑のようなものと思っていたので、クリアするまであまり読み込んでいなかったのです。テキスト量も膨大ですから。
テキストといえば、量が多いのは嬉しいのですが、やや日本語が下手なのが難点ですね。文法がおかしいところや、誤字脱字がかなりあります。私が言うのもなんですが…やはり商品ですから、きちんとしていただきたい。
たとえばキトの説明文、最初に「エンドに関心を持っている」と書いているのに、終わりにもまた「不思議とエンドには関心を持っているようである」と書いてしまっています。わかったから。関心持ってるのはわかったから。
エンドの初期武器の説明もひどいです。
”「刀身に使用している金属は魔力に感応する性質があり鍛えあげるときに、本人の魔力に感応させることで鍛えあげた本人以外は装備できなくなるが抜群の扱いやすさを誇る。攻撃と防御のバランスに優れた性能であり傭兵らしく、一人で戦う事に適した剣と言える」”(原文ママ)
もうね、読点の位置がヘンですし、設定を盛りすぎて中学生の黒歴史ノートみたいになっちゃってるんですよね。
他にも「雪は世界を覆い、すべてを隠す。たとえ、隠された真実であっても」とか…。おかしいですよ。「たとえそれが(、明かされるべき)真実であっても」等じゃないと。このように言い始めるとキリがありません。
子供プレイヤーに間違った文章を読ませないため、大人プレイヤーの没入感を削がないためにも、最低限の文法には気をつけてほしいですね。けれど、この世界観でネットスラング等を使っていないのは良かったですよ!
■開発室
Tokyo RPG Factoryの第一作となった「いけにえと雪のセツナ」。ネット上では酷評も目立ちますが、法器『剣技の結晶』の説明にあるように、折れることのない信念で次作をリリースしていただきたいです。今作同様、想いのこもったRPGであれば、必ず予約して買いたいと思います。セツナ南国編でも、まったく違う世界の物語であっても。
『剣技の結晶』
”三本の剣が交わった形が雪の結晶に見えることから名づけられた法器。その様は折れることのない信念を表している”
―――きっと、Tokyo RPG Factoryのロゴマークですよね?
いけにえと雪のセツナ、感想と考察は(7)以降に続きます。やっと!キャラについての感想と考察に入れそうです。