水の器: セブンスカーレット【超ネタバレ】考察感想メモ セブンスカーレット【超ネタバレ】考察感想メモ - 水の器

2016年8月3日水曜日

セブンスカーレット【超ネタバレ】考察感想メモ

7'scarlet(セブンスカーレット)トロコンしたので感想や考察など。


ストーリー・テキストのこと


明かされない部分もあるけど、物語の大筋は綺麗にまとまっていて満足!買ってよかった、やってよかったと思えたゲームでした。

テキストについては、言い回しや文体に違和感を覚えることがあったのは残念。

一例をあげれば、「ビロードのような透明感のある肌」ってビロードに光沢感はあっても透明感はないんじゃとか、そこ突っ込んでたら直後に「絹のような肌」って言い出してどっちだよどれだよってなるところとか。「沈黙はカネだ」という漢字読み間違いとか(ヒノならともかく教養のある人が間違える)、連続したセリフにでてくる単語の読み方に整合性がない(しらが/はくはつ)など。あとは地の文やしっかりした人物のセリフなのに「してる」という「い抜き」表現がとても多かった。

でも乙女ゲームにそこまで求めてはいけないのかなーとも。ちゃんとした文章が読みたいなら、やっぱり自分の好きな作家さんの小説を読むのがいいのでしょうね。

周回するとOPが変わったりムービーが長くなったり、ハナテルートまで見ると(真相まででもOK?)各キャラのEDにちょこちょこオマケが加わったり、手が込んでいるなあという印象。

ギャグっぽいところ、キャラ同士の掛け合いは結構面白いところが多くて好きでした。

あとは発売前、あれだけツイッターで頑張って広報していたのだから、奥音里禁忌倶楽部のサイトを実際に立ち上げてほしかったな。

各ルートの感想は各キャラのところで↓

恋愛部分:

主人公のイチコは数日前に会ったばかりの男たち(高校生含む)と体くっつけて匂い嗅げばキュンとする恋愛脳。男のことを匂いで捉えすぎ(誰かにお兄ちゃんの説明してって言われたときも確か初っぱなから「甘い香りで~」とか言う始末)、男の顔みてまつげ長い唇の形が良いって感想持ちすぎ。

一瞬で恋に落ちるのも悪くないけど、それは抱きしめられた腕の感触や匂いでじゃなくてさ、もっとハっとさせられることを言われたからとか、カッコイイところを見たからとか、内面的なところで頑張ってほしかった。

ヒノとイソラまでは頑張って全部の文章読んでたけど、以降のルートはイチャイチャシーンになったらボタン連打で全とばし。ミステリ部分のみ読めればよいってなってしまいました。

恋愛面以外でも、イチコはこの狭い町で殺人鬼が捕まってないって聞いても夜に一人で出歩くし、寄り道するなって言われたそばから寄り道するし、夜の山にも一人で入って行く完全に頭弱い人。そのせいで襲われて死んだり、庇いにきた攻略対象が殺されたりする。すぐに嘘をつくのも無理。みんなお前を守ろうとしてるのに「ヤダっ」て。なんなんお前。もういいや。

こんなのにすぐ惚れるせいで攻略キャラたちも好きになれなかった(ヒノは長く一緒にいるからいいけど)。8歳の女の子と数週間過ごしただけで12年間思い続ける対象になる?数日一緒にいただけで命張って守りたくなる?乙女ゲーってすごいな。オニイチャンに至っては理由のない魂の衝動で愛しちゃった(笑)8歳の女の子をさらって、中学で体つきが女になってきて愛しはじめるとかキモイヨー。神話モチーフだから許されてる感ある。イチコの名前は日本巫女の京阪呼びからかな?(東北でいうイタコ)

紫姓草を咲かせたのがイワナガヒメってことは作中で明言されているので、たぶんオニイチャンがニニギで、イチコはサクヤの魂を受け継いだ子なんでしょう。…と思ったけど、裏をかいてハナテルートの屍者サクヤが名前の通りサクヤヒメで、彼女に人を殺させたくなかったからイチコと逃げたってオチなら美味しい。まあ全っ然そんな感じはしなかったけど。

タイトルの考察


セブンスカーレット。セブンス=7つの。スカーレット=緋色の。つまり7本の緋色の紫姓草=7人の屍者にまつわる話、ってことだと、思う。

カグラ、トア、ハナテ、ツヅリ、ユヅキ(ルートによる)、イソラ父、サクヤ(ハナテルートでイチコを殺そうとしていた女性)?


キャラのこと


ヒノ…

カグツチ=火の神の名に恥じない活躍。元凶である呪いの花、紫姓草を焼き払って終幕させる。いつもいじられキャラだけどヒーローとしてはどのルートでも終始かっこよかったと思う。あ、イソラルートだけは守るべき相手がいるのに食べ過ぎておなか壊して寝込むのかっこ悪かったな(笑)それと浴衣はクソダサイ。ユアの策略だろ(笑)

あとは目の色を赤にしたのは失敗だったと…。いや火の神で赤い目って単純でいいんだけど、肝心のメインストーリー根幹に赤目アルビノの特別性ってネタぶっこんでるんだからさあ…。

イソラ…

雨月物語の「吉備津の釜」に出てくる怨霊が磯良(イソラ)。主人公が座敷牢に閉じ込められたり、イソラを恐れて護符を貼った部屋から出られなくなるくだりがあるので出典はこれかな?

ただ他の人みんな日本神由来なのにひとりだけ怨霊由来なわけないだろってことで阿曇磯良が浮上するけど、全然関連を見いだせないよ。阿曇磯良は海の水を一杯にしたり涸らしたりする玉をくれる女神だよ!というより皆、姓が日本神なんだから甘梨の方に注目すべきなんだろうけど全くもって不明。知識がほしい。

セブスカ内ではただただ怖い人だった。将来絶望。彼女ってわけでもないイチコが別の男(一緒に旅行に来てる幼なじみ)と観光してただけで、イチコが食べられないイチゴタルトをわざと出して「焼いたんだから食べてよ」と低い声出すのどうなん。しかもイチコがイチゴ食べられないのお前のせいっていう…。

まあそこまでなら感情的な高校生の嫉妬で終わるけど、その後の監禁は言うまでも無く犯罪すぎてどん引きだし、イチコが手も怪我してればよかったと言うのとか、イチコを襲った男の頭を床に何度となく打ち付けるのとかヤバすぎるでしょ。正当防衛もつかないよコレじゃ。イソラの顔色を伺いながら生きる未来しか見えないし、いつかヒートアップして暴行か傷害か○人で逮捕されるだろな。

トア…

クシナダの時点で悲しい予感はしていたんだ。忘れてたけど。

発売前にトア=エイトってHPでもツイッターでもネタばらしをする必要あったのかな?そこに注目させることで屍者っていうもう一つの正体から目を逸らさせたのかもしれないけど、知らずにプレイしてびっくりしたかったなー。

屍者だったことについては、ちょいちょい「ん?」て思いつつ、真相まで気づいてなくてびっくり&涙…。背中にアザがないって知らせておくのとか上手いよね。てか月読以外にもいるとは思ってなくて。夏にドテラ着て暑くないとか飲み物しか飲んでないとかもう時間ないって言うとか伏線はりまくってたのになー。ネコが寄ってくるのもかな?たしか月読にも寄ってきてたな。

真相はすごく悲しかったけど綺麗に終わったと思う。「その町でおこる、絶望という名の奇跡」というキャッチコピーが綺麗にはまっていた。最近ADVやRPGのコピーがすごく適当で物語に合ってないのが多いから、これは嬉しかったところ。残念なのはスターリーの声が入ってなかったことで、これは肩すかしもいいとこだった。

ソウスケ…

建比良鳥命が元ネタかと思ったけれど関連わからず。ルートとしては王道ミステリっぽくみんなを集めて犯人探しの謎解きがあるのがよかったな。追い詰めすぎてやばいじゃんと思ったけどヤスとの連携も取れてて一安心。割と好きなルート。


ユヅキ…

他メン同様すぐイチコに惚れるけど、一番納得性はあった気がする。あんな性格と家柄じゃ今まで寄ってくる女性もいなかっただろうし。39度の熱出して弱ってる時に看病されてコロっといっちゃったね。父にも刃向かってくれたしね。ノーマルエンドの、屍者として蘇らないほうの話が、イチコの成長も見られてよかった。

屍者を駆除するのでなく還す方針でこれからの里を治めていくのは素晴らしいなって思ったので、もちろん生きててほしいんだけども。そうすると絶縁されちゃってユキくんが跡目になるのかな、でもユキくんとユヅキはいい関係(というか兄弟らしい)だからうまくいくよね。あれ、でもユキくんは上京して芸能事務所に入るのか。どうする叢雲家。

ユキ…

お疲れ様でした。苦労人だなあ。いや、管理人なんだけど。ヒノノーマルで、自分があんなサイトを立ち上げたせいで悲劇が起きてしまったって泣いてるユキくんつらい。

ヒラサカが黄泉比良坂から来てるなら、生と死の境にある奥音里にぴったりの名前。この町を古い考えから脱却させたいって思ってる節が強いようだし、町の人からも未来を託されてるとか期待されてるんだよね確か。奥音里をこのままゆるやかに死なせていくか、生ある方向に変えていけるのかを背負った子、という印象でした。彼さえよければいつか奥音里に帰ってきてほしい。


ユア…

お疲れ様でした。イチコアゲのためにサゲられたりして可哀想。トアの件は本当に心が痛かったでしょう…。泣けた。真相ルートではスサノヲらしく、体を張って、クシナダの魂を守ったんだなあ…。声優さんがとても上手で、全キャラの中で一番印象に残りました。


ヤス…

真相ルートでカスになってしまい、大嫌いになったのが残念。バカだけど憎めないやつか、実は狡猾で頭のいいやつか、どっちかであって欲しかった。当事者でなければそんな急に考え方を変えられないのかもしれないけど、ここまで皆で頑張ってきたのを目の当たりにしておいて、トアの思いを聞いておいて、お前それはないだろと。ヤス以上に屍者=駆除すべき悪だと育てられてきたユヅキだって、少し話しただけのツヅリから何かを感じたのにね。

と、プレイのさなかでは憎しみしかわかなかったものの、プレイから時間が経つにつれ「わからなくはない、ヤスの行動もわからなくは」と思えるようにはなってくるのが不思議な感覚。あれだけ毎日毎日、親・友人・知人・町の人たち、周りのあらゆる人間から「アホで役立たずでダメなやつ」と言われ続けていたら実際、病むよな。表面上は明るいけど、「認めて欲しい、認めさせてやる」って思いは凝り固まってってたのかもなあ。「そんなに出世が大事!?」ってユアが叫んでいたけど、大事だったんだろうなあ。

カグラ…

「カメラマン」と「月」が黒幕にされがちなのは可哀想だと思います(小並感)
あと、あの…。イソラルートで焼死したのがめっちゃこわいです。そもそも屍者って不死で、傷の治りもめちゃくちゃ早い設定じゃないですか。でも痛みは感じるんですって。誰かわからなくなるくらいまで燃えつきるまでの苦しみってやばくないですか。こういう細かいとこ考えちゃってゾっとします。


チカゲ…

大人げなくて、情けなくて、男らしくて、格好良かった。かなり好きです。

ハナテ…

「イワナガヒメに呪われた男」ってことからニニギだと思うんですけど、なんで名前が夜刀神ハナテなのだろう?夜刀神は蛇の体をした神だから、奥音神社に現れたという白蛇のことかしら。白蛇=アルビノだし。イチコが、オニイチャンの目と自分の目がおんなじだ、と言うので、ハナテもアルビノってことだよね。

あと、イチコを好きになったのは「エサ」がサクヤヒメの魂を持ってるからかなーと思ったけど、じゃあハナテが最初にヤっちゃったエサは違うの?というのも謎。それ以外にも時々エサはあらわれてるみたいだし、それらとイチコの違いが作中で説明がないので、衝動的にイチコを愛したって言われてもポカーンとしました。え、そこの理由とばしちゃうんだ。


作中tipsで明言されていることは、

”日本神話に登場するイワナガヒメの呪いで咲いた花・紫姓草が、永遠にこの世に存在できる屍者を生み出す”

”ニニギノミコトが、永遠の命を約束されたイワナガヒメとの結婚を断り、儚い時を美しく生きる妹・コノハナサクヤとの結婚を選んだ。これに怒ったイワナガヒメの呪いによってニニギノミコトは永遠に生きられず、花のように儚い命を生きることになった”


イワナガヒメの呪いならば、「永遠には生きられなくする(寿命をもたせる)」ってことのはずなのに、「永遠に存在できること」が呪いというアレンジが面白いと思いました。呪われている当人である屍者自体は、(一度死んでいるとはいえ)不死なんですよね。ただし生者を狩らなければまた死ぬ。だからイワナガヒメの思惑通り、狩るしかない。まどろっこしいですが、でもそれでこそ呪いって感じの呪いです。

しかも、現世にやり残したことがある者を蘇らせるという念の入れよう。別にやり残したことがなければ、生者を狩ってまで生き延びようと思わないかもしれないもんね。さらに「殺意」を「食欲」のような渇きとして与えてるみたいで…。こわっ。

さて、最初の屍者であるハナテ。本作品のイワナガヒメは、ニニギ(ハナテ)を復活させて永遠を与えています。「永遠」は、「自分と結ばれたときに」ハナテに与えられるはずだったもの。さらに、イワナガヒメの一部である紫姓草とハナテをリンクさせてる=自分とハナテを一心同体にしちゃってる。これもう一方的な婚姻じゃないですか?偏愛というか、妄執でしょ。こ、こわっ!

そしてハナテ自身の手で人間を狩らせ続ける…。サクヤと同じ、一瞬の命しか持たない人間を。ああ、いつかサクヤヒメの魂が転生したエサも混ざってるかもね!お楽しみに!ってか…?女の恨みこわっ!!!

とか散々言いつつ、イワナガヒメが「永遠に生きること」を「呪い」としたなら、自分の運命そのものをひどく呪っていたのだろうと思うと悲しい話ですね。


長くなりましたが、ハナテが消えた後。OPのセリフをイチコが言い、物語としてとても綺麗に終わったなと思いました。それでいて最後。ソウスケからもらった1輪の紫姓草が庭に咲いていることにゾッとしました。いつかイチコが大切な人を亡くして、立ち直れずに泣き暮らしていたら…。あの花が誰かにもらわれていったら…。なんだか、いつか紅くなりそうでコワイデス。イワナガヒメは、ハナテを連れて行ったんだから、もうそれで満足してほしいですね。


総じて大満足な終わり方でした。
恋愛部分でグチグチ書いてしまいましたが、これは私が乙女ゲームというものに向いていないからなんだろうな、と思っています。今後は一般ADVでこうしたゲームが増えると、嬉しいのですが。